偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「だからっ、青山さん邪魔だってっ!」

山口はイライラした声で(うめ)いた。
青山が「上司」だということをすっかり失念している。

だが、しかし……

「あ、あれ……あの男、なんだ⁉︎」

山口の顔が(いぶか)しげに歪んだ。

テラスの入口から、だれかが制止するのを振り払って、稍へ向かって、まっすぐに歩いていく男の姿が見えたのだ。

グレーのスーツを着た、一七五センチくらいの割と整った顔立ちの男だった。

「あら、まずまずのイケメン♡」

麻琴が愉しそうに、ふふっ、と笑った。

「確かにそうだね」

石井も口角を上げて、ニヤリと笑う。

さすがの青山も、稍の方へ振り向いた。

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