偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
大阪風「たぬき」蕎麦ができた。
揚げ玉入りではなく、関東で言うところの「きつね」蕎麦である。
稍は食材だけでなく「調味料」も持ってきていたので楽勝にできた。
京都風に「あんかけ」にしたかったが、葛はもちろんのこと片栗粉すらなかったため、さっぱりと大阪風になった。
「智くーん、お蕎麦できてんけどー」
物置部屋まで呼びに行く。
「おう、サンキュ。引っ越し蕎麦か」
今度はこの部屋が、足の踏み場もないほどになっていた。
今朝まで積み上げられていたダンボールが、今は畳まれて部屋の端に束ねられている。
その中に入っていたものは仕分けして重ねてあるみたいだから、収納家具が届けばすぐに片付くだろう。
もともと神経質なほど律儀な性格だし、仕事もできる人だから、合理的に片付ける算段をしながら、作業を進めているのはさすがだな、と稍は思った。
「あっ、エッチなDVDとかあったら、わからんようにうまく隠しといてやー」
稍にちょっと、いたずら心が出た。
「アホか、そんなんあるか」
智史にぎろり、と睨まれる。
「あ、そっかぁー。今はそういうのネットで見られるもんなぁー」
稍が怪しい流し目で智史を見る。
「心配すんな。そういう気になったら、これからはおまえで『処理』するから」
智史が一転して、目を細めて愉しげに言った。
稍の余裕ぶった顔が、一瞬のうちにぎょっ、となる。
……やり過ぎた。返す刀で返り討ちやん。
「おまえがここを収納部屋にしたら、って言うてくれて助かったわ……おまえ、もうおれの寝室以外では寝られへんな」
智史が黒く笑った。
稍がまんまと自分の策にハマったことを意味していた。