偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……仕方(しゃあ)ないやろうが。うちのオカンはもうずっと、こっちの勤務やし、GW中は忙しいやろうから、とっとと話を終わらせられるわ」

智史にはなにか「作戦」があるようだ。
稍は苦渋の表情を浮かべながらも、肯いた。

「おまえ、明日はちゃんとした服着ろよ?
……あ、海賊の店のときの服、持ってきたか?
あれがいい、あれにしろ」

まるで「上司」だった頃のように指示して、智史は稍が淹れたコーヒーを一口飲んだ。

顔色が、変わった。

「……親父の淹れたコーヒーと(おんな)し味やな」

小学生だった稍は、母親がコーヒーを淹れていた姿をじぃーっと見ているのが好きだった。
高校生の頃くらいから、見よう見まねで淹れたコーヒーは、稍の父親に評判がよかった。

ミルクたっぷりのカフェオレである。
砂糖は入れてないのに、やさしい甘みがあった。

のちに、栞も好んで飲むようになった。


……智くんのお父さんの味、やったんかぁ。

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