偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……おれがステーショナリーネットに入った経緯(いきさつ)とか、魚住課長……和哉さんとは従兄弟(いとこ)同士なこととかは、麻琴は知らんからな」

ちょうど、信号が赤になった。
ハンドルを握る智史が、稍の方を見る。

「社内で知ってんのは、社長と和哉さんと石井くらいやな。石井は社長の従弟(いとこ)で、ゆくゆくは『社長の右腕』として重役になるからな。
……ほんで、おまえや、稍」

まっすぐに見つめられて、稍は思わずたじろぐ。

「で…でも、あたし……智くんが麻琴さんのこと呼び捨てにしてんの、ちょっと気になる」

不意に、稍の口から思ってもみない言葉が飛び出した。

……あ、あたし、なに言うてんねやろっ⁉︎
「偽装」で結婚する相手なだけやのにっ!

稍は自分でもワケがわからなくて、あわてふためく。智史もさすがに驚いた顔をしていた。

でも、すくに目を細めて、

「わかった……もう呼び捨てにはせえへん」

稍の頭をぽんぽん、とした。


そのとき、信号が青に変わった。

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