偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

車はいつの間にか、市街地を抜けていた。
時折カーブのある坂道をどんどん上がっていくにつれ、両側に青々とした自然の木々が彩る景色が(あふ)れてくる。

神戸は北へ上がれば六甲山系の山側、南へ下れば瀬戸内海に面した浜側に行き着く。
坂道を上っていくということは、北上しているのだ。

神戸は稍が生まれた街だが、小学生の頃に離れて以来、訪れることはほとんどなかった。
だから、土地勘というほどのものはない。

だけど、この道がどこへ向かっているのかはわかった。

今年の正月、帰省した際にたった一人でバスに乗って訪れたからだ。婚約者だった野田は、どうしても連れてくる気にはなれなかった。

「あっ、あそこにお花屋さんがあるから」

行き先を察した稍が指で指し示したそこは、小洒落た花屋ではなく市の管理事務所だった。
そこの一階で必要なものを買って、また車に乗り込み、駐車場へ向かう。

もうそこは、神戸市立鵯越(ひよどりごえ)墓園だった。

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