偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

稍の叔父の名前である。

当時、神戸大学(しんだい)の工学部の学生だった彼は、灘区にある二階建ての文化住宅のようなアパートで一人暮らししていた。大学に通いやすい立地だった。

姉である稍の母親は、弟がちゃんとごはんを食べているかどうかが気になった。
だから、結婚して須磨区に建てた家に彼をよく呼んだ。

叔父は本とマンガとパソコンが好きな人で、収集するのが好きなコレクターだった。
塾の講師のバイトをしていた彼は、学生の割に羽振りがよかった。

稍の家にもいくつか持ってきていたMacなどの「ヴィンテージ」PCを、楽しそうに自分でメンテナンスしている姿が、稍には今でも目に浮かぶ。

そして、その横には、いつもうらやましそうに見つめる智史の姿もあった。
彼が稍の家に来た、と聞きつけると、並びにある自宅から飛んで来た。

小学生だった智史は級友たちから「さとふみ」と呼ばれず、「さとし」と呼ばれていた。
稍も「さとふみくん」とは言いにくいから「さとくん」と呼んでいたくらいだ。「(さとし)」という名の叔父とは、親近感があったのだろう。

だけど、叔父が大切に「育てて」いたヴィンテージPCは、子どもたちには触らせてくれなかった。

しかしある日、「これやったら、ガンガン使って壊してしもうても(かま)へんで」と持ってきてくれたのが、MS-DOSがOSの中古のパソコン「Windows3.1」だった。

電源を入れても真っ黒なまんまの画面に、浮かび上がる白い文字に、稍も智史も夢中になった。
特に智史はあっという間に、入っていたBASICを使って、プログラミングまでするようになった。

< 323 / 606 >

この作品をシェア

pagetop