偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
稍の叔父の名前である。
当時、神戸大学の工学部の学生だった彼は、灘区にある二階建ての文化住宅のようなアパートで一人暮らししていた。大学に通いやすい立地だった。
姉である稍の母親は、弟がちゃんとごはんを食べているかどうかが気になった。
だから、結婚して須磨区に建てた家に彼をよく呼んだ。
叔父は本とマンガとパソコンが好きな人で、収集するのが好きなコレクターだった。
塾の講師のバイトをしていた彼は、学生の割に羽振りがよかった。
稍の家にもいくつか持ってきていたMacなどの「ヴィンテージ」PCを、楽しそうに自分でメンテナンスしている姿が、稍には今でも目に浮かぶ。
そして、その横には、いつもうらやましそうに見つめる智史の姿もあった。
彼が稍の家に来た、と聞きつけると、並びにある自宅から飛んで来た。
小学生だった智史は級友たちから「さとふみ」と呼ばれず、「さとし」と呼ばれていた。
稍も「さとふみくん」とは言いにくいから「さとくん」と呼んでいたくらいだ。「聡」という名の叔父とは、親近感があったのだろう。
だけど、叔父が大切に「育てて」いたヴィンテージPCは、子どもたちには触らせてくれなかった。
しかしある日、「これやったら、ガンガン使って壊してしもうても構へんで」と持ってきてくれたのが、MS-DOSがOSの中古のパソコン「Windows3.1」だった。
電源を入れても真っ黒なまんまの画面に、浮かび上がる白い文字に、稍も智史も夢中になった。
特に智史はあっという間に、入っていたBASICを使って、プログラミングまでするようになった。