偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

その後、稍の父親は愛する若妻の元へ帰って行った。

去る間際、ぽつり、と言った。

「正直言うて、正月のときの稍には、嫁に行くっていう実感が湧かへんかった。
……せやけど、今日の稍を見てたら、
『おれがなにを言うてもおまえは嫁ぐ気やねんな』って初めて思うた」

その寂しげな表情こそ、娘を男手ひとつで育ててきた「花嫁の父」の顔だった。

< 339 / 606 >

この作品をシェア

pagetop