偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……それやったら、買う必要ないかも」

稍がぼそり、と言った。

「そういう『普通』のヤツやったら……今着けてる」

男の人にとっては「エロい」のかもしれないが、女子にとっては「勝負下着」にもならない、通勤・通学用の「普段着」の(たぐい)である。

「おまえ、おれが昼間に脱がそうとしたときには、色気の欠片(かけら)もないユニクロのタンクトップやったやんけ?」

智史が目を見開いて稍を見る。

「おとうさんと会うために、ワンピに着替えたやん。お墓のお掃除で汗もかいたから、そのときにシャワー浴びて替えてん。えっと、色は……」

「言うな……あとの愉しみにさせてくれ」

そう言うと、智史は大通りに出て手を挙げ、タクシーを止めた。
押し込むように稍を車の中へ入れ、宿泊するホテルの名を運転手に告げる。

「あっ、透け透けとか、ぱかっ、とかとは違うからっ」

自分でもなにを言ってるんだろう、と思いながら稍は弁解する。

「わかってる……そういうのを、今度一緒に買いに行くからな」

満面の笑みで智史が稍の頭を、ぽんぽん、とした。

……なんか、妙なスイッチを押してしもうた、かも?

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