偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

ずいぶん大きくなった稍を抱えて、みどりは「火事場の母力」で階段を降り切った。
階段には割れたガラスが飛び散っていた。

玄関で靴を履いて、表に出る。

「お…おとうさぁんっ!」

栞を抱いて外に出ていた父の巧に、稍は駆け寄ってしがみついた。

「……あぁ、稍……無事でよかった……」

巧は栞を片手で抱き直し、もう片方の手で稍を引き寄せ、その頭をくしゃくしゃっと掻き撫でた。

界隈の人たちも、みんな家の外に出てきたようだ。寒空の下、パジャマや部屋着の上にコートやカーディガンを引っかけただけの格好だった。

口々に「こないに大きな揺れ、初めてや」「関西で地震が起こるやなんて」「神戸に住んどうって、まさか地震に遭うとは」と言っている。

近所のおじさんが、最近普及してきた携帯電話をかけてみるが、「あかん……全然通じへんわ」と舌打ちした。


「……青山さん……大丈夫やったやろか」

みどりが、絞り出すような声でつぶやいた。

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