偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「……栞を産んだのは……『確信犯』や。
どうしても……この人の子どもが産みたかったから」

そう言って、みどりは洋史を見た。
愛する人の子を(のこ)したいという「雌の目」をしていた。

「そのときに、お互い離婚しようとは思わへんかったんかな?」

智史が訊いた。リムレスのレンズが光って、彼の目の表情はわからない。

「……おれは、登茂子に離婚を切り出す、って言うた。なにもかも捨てて、生まれてくる子どもと三人でイチからやり直そう、って」

洋史が(しぼ)り出すような声でつぶやいた。

「あたしが……止めたんよ。
稍を置いて、出て行くわけにはいかへんから。
あたしが、稍を失いとうなかった」

みどりが唇をきつく噛んだ。

「栞が生まれても、表面上はうまく行ってたんよ。せやったら、このままでもええか、って思ってた矢先に……」

稍はその言葉に肯いた。
まったく、気づかなかった。しあわせだった。


「……震災が起こった」

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