偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

そして、顔を上げた稍が見たのは、普段は冷静沈着に業務をこなす人事部の面々の、好奇心に満ち満ちた顔だった。

全員の「あの鉄仮面の青山リーダーが結婚⁉︎しかも、妻を同じ会社で働かせる⁉︎」という心の声がダダ漏れしていた。

特に、先月の入社初日に稍のIDカードをつくってMD課まで案内してくれた子の、らんらんと輝く瞳が怖ろしかった。


「綺麗なお辞儀だね。さすが青山君が選んだお相手だ。こちらこそ、よろしく頼むよ。
……じゃあ、だれか麻生さんのIDカードつくってあげて」

という人事部長の声に「はいっ、小林(こばやし)がやりますっ!」と元気よく挙手して応じたのは、その彼女だ。

小林はGW明けのこの日が早番だったことを天に恨んでいたが、こんな「ギフト」が待っていたとは。今日のお昼の社食ではスターになれそうだ。

「すまないが、君、ここでの用が済んだら、こいつをMD課まで連れてきてくれないか」

青山が防水レザーの土屋鞄のブリーフケースからクリアファイルを出して渡しながら、小林に稍のことを頼む。

それを両手で受け取った彼女は、

……きゃあぁっ、あのクールな青山さんが奥さんのために頼みごとしてるっ。
それに『こいつ』って……⁉︎

と、顔中で叫んでいた。

しかし、稍の方も心中で叫んでいた。

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