偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「実はMD課のアシスタント業務は先月まで、派遣さんがやってたんですよねー。でも、一ヶ月で辞めちゃったみたいで。すっごく地味ぃ〜な感じの人だったから、合わなかったんでしょうねぇ」

……それ、あたしです。

MD課へ向かう途中も、小林からは質問攻めだった。MD課までの道なんか百も承知であったが、「新入社員の麻生 稍」としては、そういうわけにもいかないらしい。

「ステキなマリッジリングですねっ、どこのですかっ?」

二人で中央をきゅっ、と絞ったみたいなデザインの結婚指輪を見た。

「ティ…ティファニーだけど」

すると、小林の顔がぱあぁっと花が咲くようにほころんだ。ティファニー・マジック炸裂だ。

「麻生さんはもちろんですけど、青山リーダーもすっごく似合ってましたぁー!」

青山が小林にクリアファイルを渡した一瞬の間に、彼女は左手薬指をガン見していた。

「確か、魚住課長よりもかわいらしいデザインでしたよねっ?男の人でああいうの似合うってめずらしくないですかぁ?」

稍は、はにかんで(うつむ)いた。
小林は稍の初々しい「新妻」ぶりを見て、知りたかったことを聞いてみた。

「……あのっ、青山リーダーはおうちでもあんなふうにクールなんですかっ?」

小林の瞳が好奇心で活き活きと輝いている。

「うーん……うちでは『普通』かなぁ?」

稍は曖昧に答える。

「『普通』って、新婚さんでいうところの『普通』ですかっ?」

小林は食い下がる。

……新婚さんでいうところの『普通』ってなに?

稍がきょとんとした顔になる。

「だーかーらぁー、あの青山さんでも奥さんの前では『デレる』んですかっ⁉︎」

……デレる?

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