偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「わたし、二十代の頃、大阪支社の勤務だったんだけど、魚住さんが教育係だったのね。
大阪ってね、一見フレンドリーなようでいて、実は余所(よそ)者には結構冷たい街なのよね。
特に『東京生まれの東京育ちの女』なんて、『やっぱりシュッとしてるわ〜』って猫なで声で寄ってくるか、『お高く止まって大阪をバカにしてる』って敬遠されるか、どっちかだったわ」

稍はその逆で新卒で東京勤務になった。

だが、東京という街はいろんな地方から出てきているのがあたりまえだから(最近は外国人の同僚だってめずらしくなくなってきたし)そんな苦労はせずに済んだ。

「魚住さんは関西出身だけど東京育ちだから、垣根なく接してくれた唯一の男の人だったのね」

麻琴はどんどん「そのとき」のことを思い出しているようだった。

「加えて、あのルックスでしょ?
好きにならないわけ、ないじゃない」

麻琴は氷の溶け始めたスコッチを一口含んだ。彼女はいつもダブルのロックだ。

「大学時代にわたし『高嶺のお姫さま』って呼ばれてたの。本気で向かっていったら、絶対に振り向かせる自信があったわ。バレンタインの本命チョコもクリスマスプレゼントも誕生日プレゼントもぜーんぶあげたの。
……でもね、いつも『ありがとう』の一言で終わり、なのよ」

……うっわぁー、魚住課長もたいがい「オンナの敵」だわぁ。

「でね、てっきり彼女がいるって思ったら『いない』って言うじゃない……ま、あの頃のわたしは彼女がいようがいまいが手を緩める気はさらさらなかったけど」

……す、すっごいなぁ。
でも、麻琴さんぐらいのビジュアルなら納得、だけど。しかも、ボン、キュッ、ボンッのナイスバディだし。

「それで、わたしから頼んでデートしてもらって『好きです』って告白(コク)ったの……生まれて初めてよ、自分から言ったの」

……おおぉっ⁉︎

「だけど、なんか曖昧にされちゃって」

……魚住課長っ、智史ともども天誅ですっ!

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