偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「青山さんがわたしにね……『妻がイヤがるから、自分の名前をもう呼び捨てにしないでくれ』って口止めしてくるのよ」

愉快そうに笑っていた麻琴が、一瞬だけ泣きそうな顔になった。

「あの……だれに対しても興味のなさそうな、あのクールな青山さんが……」

青山からは『おれも金輪際、君を呼び捨てにはしない』とも言われた。
もう「おまえ」とすら呼んでもらえないんだ、と麻琴にとっては「最後通(ちょう)」だった。

「妻」になった人が……ある日突然、職場にやってきた日のことだ。


「麻琴さん……あの、あたし……」

ここまで心の中を(さら)け出してくれた彼女に……自分もまた「本当の気持ち」を話そう、と稍は思った。

「あたしは、小学生の頃、智くんのことが好きでした。でも、震災がきっかけで離れ離れになって……こんなに年月が過ぎて、やっと再会することができました。
それまでには何人かおつき合いした人もいます。
だけど、あたしは……今までこんなに好きになった人がいないくらい、智くんのことが大好きになりました」

稍は麻琴をまっすぐに見て、告げる。


「だから、だれにも……あなただけじゃなくて、だれにも……智くんを……」

稍は大きく息を吸い込んだ。

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