偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎
「お二人で、社長にまで挨拶に行ってましたよね?」
山口は畳みかけるように言う。
さすが営業だな、と稍は妙なところで感心した。
そういえば、元婚約者も営業だったが、こういう感じだったな、と思い出した。
そして、流されて、ついプロポーズを受けてしまった。
「もし、この結婚が……例えばですよ?」
山口が稍の目を覗き込む。
「ウソっていうか……なにかしらの事情で『偽装』だったりしたら、社長までも欺いてる、ってことになりますよね?」
……稍の頭の中が真っ白になった。
「青山さん、十月から新設される情報システム部の初代部長だっていうじゃないですか?
課長職をすっ飛ばして大出世、ですよね」
……まさか。
「社長がこのことを知ったら……どうなるでしょうね?」
稍の心が凍りついた。
「……とりあえず、一度二人きりで会ってほしいんです。おれのこと、あなたに知ってもらいたいんです」
そして、山口は稍をせつなげに見た。
「おれ……ほんとはこんなふうにあなたを誘いたくないんです。もっと、ちゃんと誘いたかった……だけど、時間がなくて……」
しかし、急に青ざめた顔になった稍には、まったくその声は届いていなかった。