偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「ありがとうございます。それで……そちらに稍はいませんか?今夜あなたと会うと言っていたんですが。スマホを会社に忘れて帰ったので、探してるといけないから伝えようと思いまして」

智史がそう告げると、沙知からは意外な声が返ってきた。

『あたし、今夜はややさんとはなにも約束してないです。約束してるのは明日のランチなので』

「そうですか、明日でしたか。
それなら……僕の勘違いかもしれないですね。お騒がせしました」

智史は事を荒立たせることを避けて、当たり障りなく言った。

『あ、あのっ!』

沙知が、通話を終えようとする智史を引き留めた。

『ややさんのこと……よろしくお願いします。
絶対にしあわせにしてあげてくださいっ』

沙知はスマホで話をしているにもかかわらず、頭を深く下げていた。

「必ず、しあわせにすると約束します」

智史は落ち着いた低音の声ではっきりと告げた。

「それから、稍にはウェディングドレスを着させたいので、結婚の披露パーティを考えています。
ぜひ、ご出席ください」

スマホの向こうから『きゃあぁ〜、ステキっ!』と声があがった。

「これからも、稍となかよくしてやってください。そうだ……もしよければ、明日うちに来ませんか?僕も稍のお友達にお会いしたいですね」

『えっ、いいんですかっ⁉︎ ぜひ、伺いますっ!』


……これで明日、稍は出かけずにずっと家にいられるな。

智史は黒い笑みを浮かべて、通話を切った。

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