偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「あなたもステーショナリーネットの方?」

松波が麻琴にも名刺を一枚差し出す。

「は、はい……そうです」

麻琴はあわててバルパライソからカードケースを出す。同じエルメスのものだ。

「……渡辺 麻琴さんか。素敵な名前だな。
へぇ……プロダクトデザインをやってるんだ」

松波は麻琴から受け取った名刺をじーっと見つめた。

麻琴も松波の名刺を見る。

【総合診療医 松波 恭介(きょうすけ)】というほかに、お台場に新しくできた総合病院の【総合診療科 診療部 部長】という肩書が記されていた。

「見かけはこんな(なり)だけど、死んだ祖母(ばあ)さんがイギリス人だっただけで、国籍は日本ですよ」

松波は灰緑色の目を細めて、屈託なく笑った。


「松波先生、今日のお礼はまた改めていたしますので……」

智史がそう言いかけると、

「えーっ、それは困ったなぁ」

間髪入れずに松波が遮る。

「僕は今日、麻琴さんにしてもらえるものとばかり思っていたのになー」

「……えっ、わ、わたし?」

麻琴が自分自身を指差す。

「僕のこと、覚えてない?」

松波が麻琴をじっと見る。

「このホテルのバーで、あなたを何度か見かけてるんだけどなぁ。たまに一人で呑みに来てるでしょ?
……こんなふうに『再会』できるなんて『運命』だと思ったのになー」

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