偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「稍が会社で『麻生』を名乗るのは『特例』だ。
通常『旧姓』というのは一つ前の姓のことだが『麻生』は二つ前の姓なんだよ。
だから、名乗るためには社内規定で人事部長の決済をもらって、管理者IDを持つ人事課長にデータ処理してもらう必要があったんだ」

稍の嘱託社員としての初日に、智史が人事の小林に渡したクリアファイルには婚姻届受理証明書が入っていた。

だが、そのときまだ出社していなかった人事課長に宛てたものだから、小林は中を見られなかったのだ。

稍が社内で「麻生」を名乗ることができるのも、「青山 稍」の保険証が発行されているのも、智史との結婚の手続きが済んでいるからこそである。


「……こんなことなら、『青山』を名乗らせればよかった。課内のヤツからはなぜか『ややちゃん』とか『ややさん』としか呼ばれてないみたいだし」

智史はぼそり、とつぶやいた。

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