偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

「それから、この子が……息子の大和やねん」

先刻(さっき)からずっと、黙って父親の長い脚にしがみついていた、幼い男の子を稍は見た。

「ほら、大和……お姉ちゃんにご挨拶は?」

美咲はしゃがんで息子にそう促したが、大和と呼ばれた男の子は恥ずかしいのか、顔を隠して父親の脚にますますしがみついた。

「普段は怪獣みたいに奇声を発して、(ほた)えまくってる子なんやけどねぇ。周りが知らん大人ばっかしやからかなぁ」

美咲がため息を吐く。

「こら、大和。ちゃんとご挨拶しろ」

魚住が大きな手で、息子の頭をぐいっと回した。

「……うおずみ やまとでしゅ。さんさいでしゅ」

大和は、ぎこちなくつくった三本の指とともに、お利口さんに「ご挨拶」した。
男の子はおしゃまな女の子と違って言葉が遅い。
これでも、大和には精一杯だ。

……うっ、かわいいっ♡

「あそう ややです。『ややちゃん』って呼んで。やまとくん、よろしくね」

稍はしゃがんで大和と目線を合わせて、にっこり微笑んだ。

「ややちゃん……」

大和はそうつぶやいたあと、真っ赤になってまた父親の脚にしがみついた。ぐりぐりと顔を押しつけている。

「おっ、おまえ、綺麗なお姉さんと話して、一丁前(いっちょまえ)に照れてんのか?」

魚住が息子の頭を、がしがしがしっ、と乱暴に撫でた。魚住と大和は、顔も体型も、まるで相似形のようだった。

……魚住課長、あなた、美咲さんを確実に孕ませましたね。

稍は生温かい目で、魚住を見た。

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