偽装結婚はおさない恋の復活⁉︎

大和は「ままー」と美咲に抱きついた。

美咲は先刻(さっき)この子の父親がぐしゃぐしゃにしてしまった髪を整え、ネイビーのブレザーの下に着たクレリックシャツを半ズボンの中へしっかり収め、蝶ネクタイの歪みを直した。

「ママはこれから、ややちゃんとお話があるからさ、大和はパパとお利口さんにしてるんだよ?
……できるよね?……いーい?」

大和は少し場に慣れてきたのか、へらへらして話を聞いてるのかどうか、ちょっと怪しい。

「大和、ちゃんと聞いて。おしっこに行きたくなったら、すぐパパに言うんだよ?」

わが子の「調子に乗る前兆」を感じて、美咲は少々不安を感じたが、たまには父親にも母親の「めんどくさい」気持ちを味わってもらおう、と決意した。

「くっそぉっ、一生の不覚やんけっ!
美咲の関西弁はこんっなに超絶かわいいのに、
今まで気づかへんかったとはっ!
……これから、家の中では関西弁以外を禁止にするしかあらへんな……」

その頃、その子の父親は握りこぶしをつくって、心の底から悔やんでいた。
左手薬指には、最愛の妻とペアのカルティエ・バレリーナが見えた。優美な曲線のリングだ。

……あのぅ、課長。
心の声が、ダダ漏れしまくってますけど。

< 72 / 606 >

この作品をシェア

pagetop