君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


そして“大切だ”と言わんばかりに私をふわりと抱き寄せた。


「………な、ち…?」

声が、震える。


「…ごめん、今だけ。もう、裕也のもんなのは知ってるから…悪い、少しだけ、貸して」


だけど動揺してる私よりも、遥かに震えた声で、彼がそう言うから、どうしてか泣きたくなって動けなくなった。

「……苦しいよ、那知」

そう言いながらも私は彼を拒絶するなんて考えはなくて、逆に許容すらしてるんだと思う。

「………ん、……ごめん…」

那知の震えた声も、腕も、体も、苦しいほど私を締め付けて、惹き付ける。


「…逢」

離れた那知の体と、少し長い前髪の隙間から見えた熱い潤んだ瞳に、胸がぎゅっと鳴った。


それが何故なのか、自分のことさえわからずに、那知がどうしてこんなことをしたのかわかるはずもなく。



「逢、幸せにしてもらえ」



綺麗に造られた那知の笑顔を見て、またきゅっと、胸が痛いほどに締め付けられた。

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