君はいないのに今日も空は綺麗で、僕は泣いてしまった。


───俺の胸でさんざん泣いている逢を見て、涙腺が崩れてしまって、ふたり子供のように涙を流した。


意地でも泣き顔を見せようとしない俺を逢が笑うから、つられて今度は笑い合う。

彼女は魔法でも使っているかのように、コロコロと俺の表情までも変えてしまうのだ。


気付けばもう日はとっくに沈んで、暗闇がふたりを包み込む。

窓から入り込んだ月明かりは、白く床に映って、俺たちを外へ誘った。


「見て、那知…今日すごく月が綺麗だよ」

「…ほんとだ、すげぇ綺麗」


逢の部屋のベランダから二人並んで澄んだ空を見上げる。

真っ黒なキャンパスに、月が大きな円を描いていた。


「“月が綺麗ですね”が、“I LOVE YOU”……“あなたを愛しています”っての知ってる?」


「…うん、聞いたことある」

俺の問いに逢は頷いて、空を見上げた。

「他にも夕日とか星とかも隠された意味的なのがあるらしいよ」


「へー、日本人は回りくどいねぇ」


逢はクスクスと笑いながら、紺色に浮かぶ丸い月を見つめていた。

「そうだな、日本人はシャイすぎるよな。でもそれも含めていいとこなのかもな」


彼女はそれに小さく頷いた。

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