愛しているなんて言えない
「急に倒れたんですか?」

「ええ。飲み過ぎですかね。」


飲み過ぎ……

24歳の男性にとっては、たまにある事か。

いいなぁ。

こっちは、呑まなきゃやってられなくて、ついつい深酒してしまう毎日だ。


「家は近くですか?」

「近くって言えば近くです。」

ニコッと笑った笑顔が、なぜか心に響いた。

「ではお会計済ませて、気をつけて帰って下さい。」

「はい。有難うございました。」

頭を下げて診察室を出るところ、行儀いい。

きっといい会社に就職していて、いい頃合いに結婚するんだろう。


「ふぅ……」

私は、小さくため息をついた。

真面目に生きるのは、人間の最低限のマナーなのに。

なぜそう言う人が、人生損するのだろう。



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