愛しているなんて言えない
翌朝、宿直明けで同期の杉本梨花と会った。

彼女も、医者だった。

担当は、産婦人科。

周産期医療に関しては、彼女は有名だ。


「言葉、お疲れのようね。」

「そうなの。昨日の夜、変な人と出会っちゃって。」

私はデスクに、片肘をついた。

「どんな人?」

梨花は、私のデスクにブラックコーヒーを置いてくれた。

「うーん。部屋で頭を打ったって言うんだけど、その割には、元気だったのよね。」

梨花は、コーヒーカップを持ちながら、目が点になっていた。

「……そう見えるだけじゃなくて?」

「ううん。本当に元気だったのよ。」


大抵の患者は、緊急外来となると、ぐったりしているか、極度の不安・緊張に襲われていたりする。

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