愛しているなんて言えない
「余程気に入ったのね。その患者さんの事。」

私は、ハッとした。

気に入った?

断じて、そんな事はない。

「そうじゃないわ。ただ……」

「ただ?」


その後が、出てこない。

そうなのだ。

決して、彼とどうのこうのなりたい訳じゃない。

なのにどうして、彼の事が心に引っかかっているのだろう。


「面白いなぁって……そんな人もいるんだなぁって、思っただけよ。」

私は、梨花に笑って見せた。

「ねえ、ところで最近、いい人見つけた?」

「ううん。全然。」

梨花も、私と同じ独身組だ。

「早く結婚しないと、子供産めなくなっちゃう。」

そう言って梨花は、はぁーっとため息をついた。

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