愛しているなんて言えない
彼からは、全くそれが感じられなかった。


すると、梨花はクスクスと笑い出した。

「何かと思えば、そんな事?」

私が気にしている事は、友人に笑われるくらい、くだらない事なのだろうか。

「それとも、そんなに気にするくらい、いい男だったの?」

私の中で、何かが波紋を広げた。

「……どうかしら。」

若い男の子だとは思ったけれど、”男”だとは、感じなかった。

「まあ、いいじゃない。ここは病院よ。いろんな人が来るわ。そんな人だって、いるわよ。」

「そうね。」


私は、ブラックコーヒーを飲みながら、またあの人を思い出していた。

何がそうさせるのか、分からない。

ただ……

彼は、寂しそうな顔をしていた。


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