愛しているなんて言えない
「ううん。この後は?真っすぐ帰るの?」

「ええ、そうするわ。」


私は職場から、一駅離れた場所に、部屋を借りていた。

職場へは、電車通勤をしている。


「そう、お疲れ様。帰ったら早く寝なさいよ。昔みたいに、寝なくても平気なんてないんだから。」

「そうね。」

昔は夜勤をしてもそのまま、遊ぶに行っていたかもしれない。

だが、今はそれが体に堪える。


「お疲れ様。」

私は梨花に挨拶をして、ロッカールームへ足を運んだ。

白衣を脱いで、ロッカーに入れると、一人の女性に戻った気がする。

「今日も疲れた。」

額をロッカーの扉に付け、私は目を閉じた。


― まだ子供は産めるわよ -



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