愛しているなんて言えない
「種の保存ね……」

私は廊下に飾られている蘭の花を、ふと見つめた。

植物だって、種の保存の為に、懸命に生きている。

あらゆる生物が、そうしているのだ。


「だったら、子供いない人生を選択するのは、本来のあるべき姿ではないのかしら。」

梨花は、笑顔で私の肩を叩いた。

「それは、人間という高等生物がなせる業よ。決して、恥じる事ではないわ。」

その一言で、私の何かがふっと軽くなった。

「但し。言葉みたいないい女、まだそう考えるのは、早いわ。まだまだ子供は産めるわよ。」

「はいはい。」

私は梨花に淹れてもらったブラックコーヒーを飲み干し、立ち上がった。

「ありがとう、ご馳走様。」


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