愛しているなんて言えない
「……先生?高住先生?」

古河先生に呼ばれ、私はハッとした。

「この後、予定は?」

「ああ……」

そして私は、まだ休む訳にはいかない事を、思い出した。

「この後、私は宿直なんです。」

「なんだ、残念。夕食でも誘おうと思っていたのに。」

古河先生は、そう言うと手を振りながら、去って行った。


普通のOLなら、食事に誘われたら、まずは断らないだろう。

断るとすれば、余程の用事があるか、相手が生理的に受け付けないか。


でもこういう仕事をしていると、タイミングが合わないのがほとんどで。

私を食事に誘った医者達は、次々と結婚していった。

もしかして私、結婚を逃していると思った時には、30歳を超えていた。



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