輪廻ノ空-新選組異聞-
今日は人の出入りが多いように思える。

しかも浪人さんみたいな。

「江戸やと雅やかさより、粋なんを好まはるとか」

女将さんは反物と帯地を重ねたりしながら答える。

「江戸の町は、京と比べてどないどす?物騒やおへん?」

「江戸に集まってる殿さん方とかは慌ててらっしゃるんでしょうけどね、町はまだまだいつも通り」

たがら上京して驚いた、と付け足した。

「色んなお国の人もいらっしゃいますしね」

こちらのお客様も色んなお国訛りでいらっしゃいます。だから楽しくて、とにこにこ笑顔を向ける。

「へ、へぇ。そうどすな。昨年あたりから他国のお泊まり客は多うなりました」

わたしに探られてると思ったのか、動揺してる。

ガラッ

言ってる側から戸口が開いた。

「女将!」

「あ、へぇ」

女将は私の所から少し離れて応えた。

「久しいのぅ、世話になる」

「吉…、せ、関口はん。ようお越しやす」

「こんにちは」

わたしも挨拶を送りながら、笑みを向ける。

「吉」ね…。
本名で泊まる人はいないに等しい。偽名が「関口」で、本名は「吉」で始まる、と。

「初めて見る顔じゃな。新入りの中居さんか?」

「いいえ。長逗留の客です」

長州訛り…かな?

「西国のお人ですか?」

「そうじゃが…。お主はおなごひとりでまた…」

わたしは、首を振った。

「主人が西陣に商いに行ってます。わたしはお留守番」

「新婚で、主人がどうしても夜も一緒がいいと言うので大坂からついて来ました」

と、殊更ハキハキと告げた。
紗英さんの姿が見えたから。
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