輪廻ノ空-新選組異聞-
三条通は東国からの入り口。
凄く賑わっていて、旅籠はたくさんあるし、一本北に上がれば初藩の藩邸があったりで。お店もたくさんあって人が一番集まる場所。

だから、身を隠しやすいし、見つけにくい。

わたしは太陽を確認。
中天に来る正午に山崎さんが高瀬舟に乗って三条小橋に来る筈。

まだあと一刻(2時間)はあるなぁ。と、通りを見渡しながら歩いた。

新選組の巡察と行き当たらないかなぁと。

遠くから見るだけでいいんだ。
沖田さんの姿。

溜め息をつきながら、色んなお店をひやかしつつ、不審な事物がないかも見る。

何のかんの言っても、半年でわたしはすっかり新選組の習慣が染み付く隊士になってる。

それが嬉しい。


「それ、粋どっしゃろ。宜しかったら挿してみまひょか」

「は…?」

わたしは、手に鼈甲の簪を手にしたまま物思いにふけってたみたい。

「将軍はんが上洛中どす。江戸拵えの簪が人気どすえ」

「なるほど」

懐かしいと思ったら、江戸のものだったからなのですね、と返したら、店主は明らかにがっかりしたみたいで。

「江戸からお越しどしたか。土産にもなりまへんな。ほなこの舞妓にも人気の下がり桜のついた簪はどないどす」

可愛らしい桜の花がゆらゆらと幾筋も下がった簪。可愛いけど…子供っぽいよ。一応人妻だし。

「少しわたしには、幼いようですが」

「お若く見えますえ。けどそないな事どしたら、こちらのは…」

珊瑚らしい、少し濃いピンクの桜の花が一輪削り出された渋すぎず、可愛い過ぎない素敵な簪。

思わず欲しくなったけれど…。女装は一時。散々眺めて迷って。

でも断った。

「すみません…。またご縁がありましたら」

そんな事をしているうちに太陽は中天に差し掛かってた。
< 117 / 297 >

この作品をシェア

pagetop