輪廻ノ空-新選組異聞-
「ひとつは、あなたのものですよ、蘭丸」

……っ!?

「え?」

びっくりして手の上の小さな巾着と、やっぱり同じようにびっくり眼な沖田さんの顔を交互に見ちゃったよ。


「近藤先生が、お光さんに蘭のことを嬉しそうに話してたぜ」

「え…」

赤面してくるのが分かった。

「桜色が好きで、そして桜のように可憐で潔い、そこらの武士よりもののふな、しっかりとして、やさしくて、愛情深い大切な人だって、総司が惚気てくるんだ、ってな」

か、かかか可憐…って!

「こ、近藤局長に、そんなこと話しているんですか?」

思わず噛みまくってしまったよ…!

沖田さんは、真っ赤になりながらも…

「だって、その通りですから」

って!

ふたりで照れて、顔も合せられずにいると、あきれたような藤堂さんの声。

「あーあー、やっててくれよ」

使いは果たしたからな!と言い置いて立ち去っていった。
「蘭丸」

沖田さんが桜色の方をつまみ上げた。

ちりん、とついていた鈴が鳴った。

「お守りだそうです」

どうぞ、と手渡されたお守り。

胸が熱くなってきて、そして、沖田さんの家族に受け入れてもらえたんだって、一杯の嬉しさがあふれてきて。

「ありがとうございます…っ」

私は受け取ったそれを握りしめて、胸のところで抱きしめるようにしてお礼を述べた。

本当に、嬉しかった。

お姉さん、ありがとう。

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