輪廻ノ空-新選組異聞-
明け方の布団の中で、また少しだけ沖田さんと愛情のこもったやりとりをして。

本当にこれ以上ないぐらい充たされた中、起き上がった。

「朝餉の用意をします!」

そう言って、布団から出て…立ち上がろうとしたら…

流石に足元がフラフラした。

下半身が重だるくて、思わず苦笑いが漏れた。

「何を笑ってるんですか?」

沖田さんは普段通りの様子でテキパキと着替えてるんだけど。

「えと…」

思い出し笑いです、と苦笑いしながら答えて、なんだか不自然な態勢で着替えていると、沖田さんが私の腕を取って支えてくれた。

「す、すみません…。相当…疲れてますよね」

「いえ!これは嬉しい疲れです。それに、今日は夕刻までゆっくりできますからすぐ本調子に戻ります!」

私は沖田さんが心配してくれているのが申し訳なくて、明るくそう伝えた。

実際…こんなにだるくなったことはない、というぐらいだるいんだけれど…。

でも、幸せなだるさだった。


着替えを終えると、先に布団を片付けてくれていた沖田さん引き続いて、脱いだ寝間着やら、使った手ぬぐい等を籠にひとまとめに集める。

かなり恥ずかしい使用済みの懐紙は竈で火種に使うためちり籠に入れて土間にもっていった。


沖田さんは井戸から汲み上げたお水を甕に移してくれて。

わたしは朝食の準備をしながら、寝間着や手ぬぐいの洗濯を済ませた。


本当に不自由のない休息所だった。


朝ごはんを終えて、洗物も済ませると、あとはのんびりとした、何もしなくていい時間だった。


小さいながらも、きれいに手入れされた庭。そこに面した濡れ縁に腰かけて、冷たいながらも心地よい風にあたっていると、沖田さんは、その私の膝の上に頭をのせて。


「重くなったら言ってくださいね」


とわたしを見上げた。


「わかりました」


こんな風に見下ろすことはないから、なんだか新鮮で。

そして何とも言えず幸せな気持ちでわたしは沖田さんの肩を撫でながら、心地よい重みを味わってた。



本当に近藤先生、ありがとう。

とっても幸せな時間だった。

何よりも嬉しいねぎらいとご褒美。



私はのどかな中、きれいな空を見上げて、近藤先生に心からの感謝を送った。



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