輪廻ノ空-新選組異聞-
「出合茶屋?」

って、何ですか?普通のお茶屋さんと違うのかな?

お店の女将さんに告げられて、真っ赤になっている沖田さんの顔を見て、また知らない言葉か…と、溜息。

「団子を食べさせてくれるお茶屋さんじゃないんですね?」

そういう暖簾だけど…、とわたしが言うと、女将さんは笑って。

「入りやすい佇まいにしとかんとあかんよって。お忍びで泊まりに見えるお客はんもおます」

「あ、旅館なんですね?」

沖田さんが絶句したままだから、わたしが代わりに女将さんと話を。

「沖田さん、ゆっくりお話も出来そうですし、ここに入ってしまってもいいんじゃないですか?何だか他に何もない土地みたいですし」

「男衆さん同志でもうちは構しまへんえ。他所さんは断はるみたいどすけどな」

なんだか良く分からないけど…。

「ら、蘭丸…」

何かを言いたいけれど、女将さんの前では言えないみたいで。
沖田さんは唇を引き結んで真面目な顔になると、女将さんに向き直った。

「では、申し訳ありませんが、世話になります」

「へぇ、へぇ、おおきに」



案内された室は二間続きになっているとかで。開いた障子窓からは桂川がよく見えた。

「豪勢でなくて構いません。空腹ですので、夕餉の用意をお願い出来ますか?酒はいりません。それと、文を出したいので飛脚を頼みます」

川に見蕩れているわたしの背後で沖田さんはてきぱきと女将さんにお願いごとをしていた。

「文って、屯所にですか?」

私は障子を閉めて、卓袱台の所に座す沖田さんの所に行って聞いた。

「今から飯をしたため、ゆっくりしていると、日暮れになってしまいますからね。慣れない遠い夜道を歩かせる訳にもいきませんから、外泊届けを出しておきます」


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