輪廻ノ空-新選組異聞-
どきん、と心臓が跳ねた。

外泊……。

シン、と沈黙がおりた。
き、気まずい…。
だって…お互いの気持ちが分かって、外泊だなんて……。

沖田さんを伺うと、沖田さんは女将の出ていった襖ににじりよって、外の気配を確かめている様子。私もハッとして立ち上がると、改めて桂川に面した窓を開けて外の様子を探って、押し入れも開いて点検。いつでも身を守る事を考えておかないといけない。いつ襲われるか分からない身分。

隣の室も、と思って、襖を開ける。

「……なっ」

夜具が一組。枕はふたつ…。

「はぁぁ……」

背後で溜息がしてビクッとなる。

「こういう事だったのですよ、出合茶屋とは」

沖田さんが襖に半身を預けて立っていて。

心臓が早鐘な私は、真っ赤になって俯いた。

「ご、ごめんなさい。知らなくて…」

ラブホの事だったんだ……。
ううう、わたしったら…!

いくら言葉を知らなくても、女将さんの言葉で察することは出来た筈なのに、鈍過ぎるよ、わたし!

「男同士でもうちは構わない」とかね、おもいっきりそういう事じゃないか。

「いえ、いいんですよ。私もゆっくり出来るならどこでも良かったのです」

言いながら、沖田さんは襖の所を離れ、卓袱台に戻って腰を下ろし、矢立から筆を抜くと懐紙を一枚広げて文を書き始めた。

「あなたが気まずいのなら…」

途中で手を止めて、沖田さんと机を挟んで前に座ったわたしに沖田さんは言った。

「外泊というのはやめにして、遅くなると書きます。そして何とか帰隊出来るようにします」

「え?」

「私は…明後日から伊木さんと役儀のための形だけとはいえ、夫婦になるというあなたを目の前にしての一晩…自分を抑える自信がありません」

つまり、それは……

私のほっぺたが一気に燃えた。

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