BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
ぼんやりと瞳に映しているのは、真っ白い壁とシンプルなカレンダー。
カチカチと秒針が動く音は聞こえるが、時計は真上にあって見ることができない。
「はい。終わりましたよ」
「どうもありがとうございます。無理を言ってすみません」
処置を終えた看護士にすぐさま頭を下げたのは、月穂ではなく花田だった。
「いえ。ちょうど夜勤の職員が来たところで人手もありましたから。大丈夫ですよ」
四十代後半の看護師は、優しく笑いかけた。月穂も慌てて簡易ベッドに手をつき、上半身を起こす。
「帰る直前に、本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした」
あのとき、偶然看護士が通りかかり、月穂は慌てて体制を直そうとしたが、立つことができなかった。
とりあえず、上司の花田に連絡を取ってもらい、駆けつけた花田が月穂の顔色と足の腫れ具合を見て整形外科のドクターにかけ合った。
結果的には、月穂の右足は足関節果部骨折という診断だった。
骨折と言ってもヒビ程度で手術は免れた。
「いえいえ。じゃあ、また一週間後にレントゲンを撮りに外来に来てくださいね」
看護士はそう言い残し、部屋から出ていった。
月穂は花田とふたりきりになる。
「もう本当驚いた。私が論文を届けさせたばかりに……本当にごめんなさい」
「いえっ。花田さんのせいじゃありません! 私の不注意で……」
花田から視線を逸らし、ごまかすように自分の髪を何度も指で梳く。
乃々が頭を掠めた。
花田は月穂をジッと見つめながら尋ねる。
「ねえ。本当に自分で足を踏み外したの?」
彼女のせいだと責める気なんかなかった。
こうなったのは、元をたどれば自分のせいなのだと強く思っているから。
カチカチと秒針が動く音は聞こえるが、時計は真上にあって見ることができない。
「はい。終わりましたよ」
「どうもありがとうございます。無理を言ってすみません」
処置を終えた看護士にすぐさま頭を下げたのは、月穂ではなく花田だった。
「いえ。ちょうど夜勤の職員が来たところで人手もありましたから。大丈夫ですよ」
四十代後半の看護師は、優しく笑いかけた。月穂も慌てて簡易ベッドに手をつき、上半身を起こす。
「帰る直前に、本当にご迷惑をおかけしてすみませんでした」
あのとき、偶然看護士が通りかかり、月穂は慌てて体制を直そうとしたが、立つことができなかった。
とりあえず、上司の花田に連絡を取ってもらい、駆けつけた花田が月穂の顔色と足の腫れ具合を見て整形外科のドクターにかけ合った。
結果的には、月穂の右足は足関節果部骨折という診断だった。
骨折と言ってもヒビ程度で手術は免れた。
「いえいえ。じゃあ、また一週間後にレントゲンを撮りに外来に来てくださいね」
看護士はそう言い残し、部屋から出ていった。
月穂は花田とふたりきりになる。
「もう本当驚いた。私が論文を届けさせたばかりに……本当にごめんなさい」
「いえっ。花田さんのせいじゃありません! 私の不注意で……」
花田から視線を逸らし、ごまかすように自分の髪を何度も指で梳く。
乃々が頭を掠めた。
花田は月穂をジッと見つめながら尋ねる。
「ねえ。本当に自分で足を踏み外したの?」
彼女のせいだと責める気なんかなかった。
こうなったのは、元をたどれば自分のせいなのだと強く思っているから。