BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「生きていれば、今じゃなきゃダメなことってあるわ。その一瞬の選択に迷って機会を逃してしまったら、もうそのチャンスに巡り合えないかもしれない」

 花田がそっと月穂の両腕に手を添え、きゅっと握った。
 月穂は「でも……」と、正面から見据えられる彼女の視線から咄嗟に目を逸らす。

「飛び込むのが怖い? けれど、なにかを得るためには必ず初めの一歩を踏み出す必要がある。大和さんは、勇気を出してロスへ行って得たものはなかった?」

 その問いに、自然と顔が上を向く。

 ロスのカウンセラーに会って世界観が広がった。
 知らない街への好奇心に突き動かされ、危険な目に遭ったけれど、そのときに、今でも全力で走れることがわかった。

 隼祥真という、不器用でとても温かい人と出会えた。

 月穂の頭に、ロスから今日までのことが走馬灯のように駆け巡る。

「答えは顔に書いてあるわね」

 花田はニッと勝気に口角を上げ、月穂の肩をポンと叩く。

「気にしなくても、もうほとんど定時みたいなものじゃない。大和さんはもう今日の業務は終えてるし、問題ないわ」

 白衣を翻し、席へ戻る花田の背中に深く一礼した。

「ありがとうございます」

 本当に、大人になった今でも誰かに助けてもらっている自分が情けない。
 だけど、こんなふうに背中を押してくれる人と出会えたことに感謝せずにはいられない。

 目頭が熱くなるのを感じ、頭をなかなかあげられずにいると、花田はいつもと同じ朗らかな声音で言う。

「あ。ただし、くれぐれも気をつけてね。まだ足は治っていないんだから」

 月穂はようやく顔を上げ、瞳を潤ませながら「はい!」と微笑んだ。
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