BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
松葉づえを挟む右脇が少し痛む。
 しかし、月穂は痛みに顔を歪ませることなく、駅へと歩き続けた。

 ホームに着き、息をつく。電車がやってくる方向を見据えた。

 真っ直ぐに敷かれたレールの先は、自分の希望に繋がっている。

 誰かの気持ちを考えることはとても大事だ。が、今は自分の気持ちを優先させる。

 彼に会いたい。
 澄んだ空と同じように、くっきりと明確にその思いが胸にある。

 もうすぐ電車が到着するアナウンスが流れたときに、携帯に着信がきた。
 見ると、相手は夕貴だ。

 月穂は慌てて電話に出る。

「もしもし!」
『あ、大和さん! 電話くれてたよね? 俺、さっき東京に戻ってきて、またこれからフライトなんだけど、その前にどうしても連絡しなきゃと思って』
「す、すみません! お仕事中に……あの」
『ニュースのことでしょ? あれ、祥真の飛行機だったんだ』

 こちらから用件を説明する間もなく重ねられた夕貴の言葉に、月穂は愕然とした。
 一瞬で空の色が消える。

「うそ……」

 ぽつりとつぶやくと同時に、手や唇が震えた。

『でも安心して。乗員乗客全員無事だったんだよ。火も片方のエンジンだけで済んだみたいだしね』
「えっ……」

 一気に力が抜け落ちる。『無事』という響きに感極まって涙ぐむ。

『大和さん?』

 携帯から聞こえる心配そうな夕貴の声に、やっとの思いで口を開く。

「そ、そうでしたか……。あの、怪我されたりは」

 平気なふりをしようとしても、声が震える。

 視界は滲んだまま。もうひとこと話でもすれば、目尻に溜まった滴が落ちてしまう。
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