BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「パイロットは飛行機を飛ばし、無事に目的地に着くことに専念している」
いったいなんの話だろうかと、次に彼の口が紡ぐであろう言葉に集中する。
「だけど、不測の事態が起きるから……そういう恐怖心を克服し、その責任ある仕事にやりがいを感じ、誇りに思っている――小田機長は副操縦士(コーパイ)になりたての俺に、いつもそう言っていた」
祥真を見ると目は開いていて、ぼんやりと窓から空を眺めている。
月穂は次々と言葉を並べる祥真を黙って見つめていた。
「でも俺は、ただ仕事を全うするだけで恐怖心を持ったことなんかない」
彼の声色がほんの少しだけ弱まった気がした。
(もしかして、この話を聞いてほしくてここへ……?)
月穂が引き寄せられるように一歩ずつ、祥真の元へ歩み寄る。その間も、祥真は胸の内を本でも読むかのように淡々と口にする。
「この仕事をしていて思うこととか、そもそもパイロットになった動機とか、そういうものがほかの人と違っていることが多くて違和感を抱くことがあるんだ」
祥真とはまだ数回しか会って話したことがない。
この間のカウンセリングのときも、特に深い話をしたわけでもなかった。
そんな彼は月穂の中で、自信があって迷いもないクールな印象だった。
でも違う。
「小田機長のような真っ直ぐな人が不適合になるなんて……。そんなことがあってから余計に、俺が操縦かんを握っていいのか、ってときどき過る。そのせいか、自ら小田機長のところへ出向かう勇気もないんだ」
なにに対しても自信があるわけじゃない。
迷うことなく悠々とこなしているわけでもない。
なにより、クールな言葉とは裏腹に、実は優しい行動をする人だと月穂は知っていたはずだった。
月穂は目の前の祥真に視線を落とし、自分は上辺だけで彼を判断していたと気づく。
いったいなんの話だろうかと、次に彼の口が紡ぐであろう言葉に集中する。
「だけど、不測の事態が起きるから……そういう恐怖心を克服し、その責任ある仕事にやりがいを感じ、誇りに思っている――小田機長は副操縦士(コーパイ)になりたての俺に、いつもそう言っていた」
祥真を見ると目は開いていて、ぼんやりと窓から空を眺めている。
月穂は次々と言葉を並べる祥真を黙って見つめていた。
「でも俺は、ただ仕事を全うするだけで恐怖心を持ったことなんかない」
彼の声色がほんの少しだけ弱まった気がした。
(もしかして、この話を聞いてほしくてここへ……?)
月穂が引き寄せられるように一歩ずつ、祥真の元へ歩み寄る。その間も、祥真は胸の内を本でも読むかのように淡々と口にする。
「この仕事をしていて思うこととか、そもそもパイロットになった動機とか、そういうものがほかの人と違っていることが多くて違和感を抱くことがあるんだ」
祥真とはまだ数回しか会って話したことがない。
この間のカウンセリングのときも、特に深い話をしたわけでもなかった。
そんな彼は月穂の中で、自信があって迷いもないクールな印象だった。
でも違う。
「小田機長のような真っ直ぐな人が不適合になるなんて……。そんなことがあってから余計に、俺が操縦かんを握っていいのか、ってときどき過る。そのせいか、自ら小田機長のところへ出向かう勇気もないんだ」
なにに対しても自信があるわけじゃない。
迷うことなく悠々とこなしているわけでもない。
なにより、クールな言葉とは裏腹に、実は優しい行動をする人だと月穂は知っていたはずだった。
月穂は目の前の祥真に視線を落とし、自分は上辺だけで彼を判断していたと気づく。