BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「……悪い。単なるひとりごとだ」

 祥真はふいっと顔を逸らし、月穂に背を向けた。
 月穂はテーブルを挟んだところで立ち止まり、祥真の背中に語りかける。

「隼さんは、飛行機が好きですか?」

 突然子どものような単純な質問を投げかけられ、祥真は思わず振り返り、きょとんとする。

「え? まあ、好きかと言われれば好きだけど」
「そうですか」

 月穂は祥真の答えを聞いて、ホッとする。それから、ゆったりと話す。

「私はひとりでも多くの人たちのお話を聞いていきたいと思っています」

 いつの間にか緊張も動揺も消えた月穂は、穏やかな心中で言葉を紡いでいく。

「隼さんは、それぞれ違う部分はあってもそれが魅力だ……と歌っている有名な詩をご存じですか?」

 その柔らかな声に惹かれるように、祥真は自然と身体を起こし、月穂に注目する。

「つまりこういうことです。たとえば、私は鳥みたいに飛べませんが、鳥は私よりも多くの音を奏でることはできない」

 月穂は、祥真のためというよりも、自分へ語りかけていた。
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