BIRD KISSーアトラクティブなパイロットと運命の恋ー
「もしかして、私がやっとの思いで隼さんの連絡先をゲットしたり、メールしたりしている間も、自分はすでに彼と密に連絡を取り合っていたんじゃないですか?」
「いえ。私、連絡先なんて知らないから」
「本当ですか? 一喜一憂する私を見て楽しんでたんじゃないんですか? 大和さんって、案外卑怯な人だったんですね」

 乃々はぷつんと糸が切れ、年上の月穂相手でも構わず、言いたいことをぶちまける。

「自分の気持ちは一切明かさないで高みの見物。そういうの、ホントずるいし、人間性疑う」

 ――『ずっと黙ってるだけなんてずるい』

 月穂の脳裏に小学生の頃に言われ続けた言葉がフラッシュバックする。
 頭の中では『ちゃんと答えなくちゃ』と考えているのに、口が動かない。

 乃々は閉口したままの月穂に苛立った声で捲し立てる。

「そうだったんだ。だから、隼さんは大和さんに興味を持ったような目を向けていたんですね。以前に会ったことがあったから」

 怒りが堪え切れない様子で、さらに月穂に近づき顔を覗き込む。

「ということは、ロスで先に私が出会っていたら、隼さんは私に興味を示したかもしれませんよね。そもそも、それだけの理由であって、特別な感情はないのかもしれない。まだ私にもチャンスはありそうですね」

 嫌味交じりに言うと、おもむろに唇を月穂の右耳に寄せる。

「私、諦めませんから」

 月穂は耳元で聞こえた淡々とした声に背筋が凍る。

 彼女を見るのが怖くて、束の間そのまま硬直していた。
 しかし、やっとのことで小さく口を開く。

「す……須田さ……っ」
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