誠の華−ユウガオ−



何だか今日は落ち着かない。


総司といれば少しは落ち着くかな。


当てもなくふらふら歩いていた足は行き先を決めた途端芯が通ったようにしっかりと歩き出す。


「総司、入るよ」


声をかけて襖を開けると静かに寝息を立てて眠る総司がいた。


何だ、寝ているのかと残念に思う反面どこかホッとしている自分がいる。


最近寝ている時間が多くなっている気がするのはきっと気のせいなんかじゃない。


彼は確実に一歩ずつ、私から離れる支度をしているように思える。


癖のある前髪をそっと搔き上げると一瞬顔をしかめるものの目覚めることはない。


以前の総司ならば襖を開ける音で既に起きていたはずだ。


背けていた現実が鋭利な棘となってチクチクと胸を突く。


穏やかな寝息を聞いているとこちらも誘われるように段々とまぶたが重くなってきた。


私も少し眠ろうかな。


彼のお腹の上に頭を預けるとまどろみのなかに引き摺り込まれていった。


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