わたしはあなたにときめいてます


「香澄さん…。顔が赤いみたいですが、大丈夫ですか?」

わたしが使っていた赤いマグカップに緑茶をいれて置いてくれた吉弘さんが、わたしを心配そうに見つめる。

「熱でもあるんじゃないですか?」

「熱はないです!!
体が…熱いだけです…。一時的に……」

「何かあったんですか?」

「まぁ……。ちょっと……」

今から約3分前。

『香澄……さん。着きましたよ』

『ありがとうございます。助かりました』

『いえ』

『じゃあ、行きますね』

わたしが愛十に握られていた右手を抜こうとすると、抜けない。

『離して下さい』

愛十が握っているわたしの右手を離さないのだ。

『俺の家の場所…分かるよな……?』

『分かります。堀尾さんに住所教えてもらいましたから』

離して……。

『一人で行けるか……?
迎えに来ようか……?』

『一人でも大丈夫ですから。迎えは要らないです』

早く離して……。

『愛十!!! 彼女の手を離せ!!!
仕事に遅れるぞ!!!』

『香澄、本当に一人で大丈……?』

チュッ。

『大丈夫ですから。堀尾さん、車出して下さい』

『……分かった』


「何であんな事を…他にも方法があったじゃない……。何でよりによってキスを…」

「キス? 誰かにされたのかい?
それとも香澄さんがしたのかい?」

テーブルをはさんで向かいに座っている吉弘さんが知りたそうにわたしを見ている。

「ズズズ…。この緑茶おいしいですね」

「私に話ってその事なのかい?」
< 55 / 61 >

この作品をシェア

pagetop