今宵は遣らずの雨

その日の夜は、雨が降っていた。

「……もう、どんなにそぼ降る雨の夜でも、
鍋二郎さまは来られぬのだな……」

もう、遣らずの雨では引き留められないところへあの方は逝ってしまわれた。

……ようやく、身に沁みて感じられた。



実の父親の顔を見ることなく生まれた子は、粂之助(くめのすけ)と名付けられた。

次代の安芸広島新田(しんでん)藩を担って立つ者として、周囲から時に厳しく、時にやさしく育まれていった。

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