今宵は遣らずの雨

「道場では……父親は……問われぬのでござりましょうか」

小夜里は思わず目を伏せた。

そういえば、玄丞からは一度も、小太郎の父親について尋ねられたことがなかった。

玄丞だけではない。小夜里の身の回りの者たちは、だれも尋ねなかった。

ただ一人、兄の佐伯 忠之進だけが、今でもしつこく訊いてくるのだが。

< 91 / 297 >

この作品をシェア

pagetop