婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
考えてみたら、彼とはいつもエレベーターのところで会うよね。

エレベーターの階数表示をじっと見つめていたら、彼が私に近づいた。

圧迫感を覚えて、上体を反らし、ガラスにへばりつく。

なんだろう?

すごく嫌な予感がする。

「あの煩い婚約者が一緒じゃないとは……ついてるな」

その目がキラリと妖しげに光ったと思ったら、彼が身を屈めて私にキスしようとしてきて……。

「イヤ!」

そう叫んで拓海さんの頰を咄嗟に叩いた。

パシンと大きな音がして、彼が目を見開く。

「へえ、俺に手を上げるなんてなかなかだな」

私に叩かれた衝撃で乱れた髪をかき上げながら、拓海さんは口角を上げた。

「抵抗されると余計欲しくなるし、他人のものかと思うと奪ってみたくなる」

彼の言葉にゾクッと寒気がして、スナック菓子が入った袋をバサッと落とした。

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