婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
「また会ったな」

拓海さんがにこやかに挨拶する。

そういえば、レストランでのこと、前にエレベーターで会った時に謝ってなかった。

「こんにちは。先日は……お見苦しいところをおみせしてしまってすみません」

「ああ。次付き合ってもらう時は、途中退席なしな」

彼の言葉に、顔が引きつった。

出来れば誘わないで欲しい。

「はは……」

笑って誤魔化して、返答を避ける。

あー、何か他の話題はないの?

必死に考えて、今日は前一緒にいた女性がいないのに気づいた。

「今日はお連れの方は一緒じゃないんですか?」

拓海さんがひとりでいるのが気になって尋ねると、彼は他人事のように答える。

「エステじゃないかな」

「そうなんですね」

相槌を打つも、もう他に会話が思いつかない。

……困った。

早くエレベーター着かないかな。
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