婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました

「それではお名前を……⁉︎」

「わざわざ来てやったのに、こんなところでもたつくのか！」

男性は怒りを露わにして、彼女に罵声を浴びせる。

「すみません！」と深く頭を下げて謝る佐藤さん。

小鳥遊さんを呼んで来なければ……と思ったが、男性の顔をもう一度見て気づいた。

あれは……酒田商事の会長だ。

リボンとパンフレットと記念品を手に持ち、男性に近づいた。

「酒田商事の酒田会長ですね。お手間をとらせてしまってすみません。お席にご案内致します」

「お前さんは……？ん？ああ、確か……栗田百貨店の？」

酒田会長はじっと私を見て栗田の娘と気づいたようで、少し頰を緩めた。

「はい。栗田瑠璃です。以前パーティでイギリスのウィンザー城での晩餐会のお話、聞かせて頂きました。今日はお忙しい中、ご足労頂いてありがとうございます」