婚約破棄するつもりでしたが、御曹司と甘い新婚生活が始まりました
でも、結局別のことで彼に騙されていたかも……。

「私って……こんな簡単に人に騙されるなんてまだまだだなあ」

自己嫌悪に陥って暗くなる私のおでこに、玲人君がその額をコツンと当ててきた。

「だから、瑠璃を助けるために俺がいるんだよ」

この上なく優しい声で囁いて、彼は私と目が合うと微笑む。

「うん、熱はないな。じゃあ、うちに帰ろうか?」

『うち』と聞いて嬉しくなる。でも……。

「うん。あの……玲人君、ごめんね」

彼を裏切ろうとしていた自分を恥じ、もう一度謝った。

「もういいよ。瑠璃はおじさん達を守ろうとしたんだろ?わかってる」

いつものようなお説教もせずに私を許す玲人君。

彼は私を許しても、私が自分を許せない。

「こんな私……愛想つかして婚約破棄してもいいんだよ」

涙ぐみながら伝えたら、彼は目を細めて笑った。
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