その音が消える前に、君へ。



こういう裏道は嫌いじゃない、寧ろ好きだ。

木々が作り出す日陰と涼しい風のおかげで、あれだけ熱く火照っていた体がみるみる体温を下げていく。

サワサワと風に揺られて音を生み出す木々達が、歓迎しているように思えた。

木漏れ日が道を照らすように、続いている。

そんな道を歩きながらどこに出るんだろうという好奇心に駆られ、いつの間にか榊くんの横を歩いていた。


「道悪いけど、平気?」

「うん。なんともない」


そう言って一つ頷くと、榊くんは小さく笑った。



「もう少しだけ頑張って。きっとアッと驚くからさ」



その言葉は榊くんがこの場所を知っていることを証明するものだった。

迷子になる心配はないと安堵するものの、こんな学校から遠く離れた場所を知っている榊くんを不思議に思った。

親戚の家が近くにあってここを知っていた、ということはあるかもしれないが何故かそれは違うような気がした。



「ここ来た事あるの?」

「んー……まあね」



曖昧な返答にさらに首を傾げていると、榊くんが一方を指差した。

示された場所に目をやると林の奥に広がる光景に、息を飲んだ。




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